ベートーヴェンの人間関係
私的関係
ベートーヴェンは激しい感情を持つことで知られそれが人間関係に大きな影響を与えていました。
彼の私生活はしばしば困難や劇的な出来事に見舞われた。17歳の時に母を亡くしたことは彼に大きな影響を与え、重度のアルコール依存症であった父との関係もぎくしゃくしていた。
ベートーベンは結婚しなかったが生涯を通じて何人かの女性と深い情愛を交わしたと言われています。
特に「不滅の最愛の人」についてはその正体について学者の間で論争が続いている。彼女はアントニー・ブレンターノであるとする説と、ヨゼフィーネ・ブルンスヴィークであるとする説があるが、この謎は決定的な解答には至っていないのが実情です。
パトロンとの関係
リヒノフスキーは、ベートーヴェンの重要なパトロンの一人であり、彼の音楽キャリアにおいて大きな影響を与えました。
彼はベートーヴェンがウィーンに移住した後、彼の作品を支援し、演奏の機会を提供しました。特に、ベートーヴェンのピアノソナタや室内楽作品の初演を行うなどで、彼の音楽を広める手助けをしました。
リヒノフスキーとベートーヴェンの関係は、ベートーヴェンに経済的な安定をもたらし、彼が創作活動に専念できる環境を整えたといえるでしょう。ただずっとうまくいっていた訳ではなくしばしば険悪で、支持と拒絶のせめぎ合いになったことも知られています。
対照的にルドルフ大公のように強く永続的な友情を育んだパトロンもいました。
ベートーヴェンとハイドンの師弟関係
師弟関係としてはベートーベンはウィーンでハイドンに師事していました。
ハイドンはベートーヴェンに対して、ウィーンに来れば喜んで私の弟子として歓迎すると言ったとされ彼の才能を高く評価していました。
そして1792年にベートーヴェンはウィーンに移りハイドンのもとで作曲を学び始めました。ハイドンは当時既に著名な作曲家で、彼の指導を受けることはベートーヴェンにとって大きな意味を持ちました。しかし、二人の関係は必ずしも円満ではありませんでした。
ベートーヴェンはハイドンの教えに対して不満を抱くことが多く、特にハイドンの伝統的なスタイルに反発を示していたようです。
彼は自らの音楽的アイデンティティを確立するために、ハイドンの影響を受けつつも、独自の道を歩むことを選びました。ハイドンもまた、ベートーヴェンの才能を認めつつ、彼の独立心に戸惑いを感じていたと言われています。
ハイドンはベートーヴェンの初期の作品に対して批判的な意見を持っていたこともあり、特にベートーヴェンの弦楽四重奏曲に対して「悪くはないが、ハイドン自身やモーツァルトがすでに言ったことに過ぎない」と述べたことがあります。
また、ベートーヴェンはハイドンの指導を受けた後、彼の批評に対して敏感であり、特にハイドンが彼の三重奏曲の一つに対して「もう少し手を加える必要がある」と言った際には、非常に驚き、心に留めた、とされています。
ただこのような批判にもかかわらず、ベートーヴェンはハイドンに対して感謝の意を示し、次の作品であるピアノソナタのセットをハイドンに捧げました。
ベートーヴェンはずっとハイドンに対して非常に敬意を表していました。実際にハイドンはとても偉大で歴史的な音楽家ですが、彼はハイドンを当時でもヨーロッパ中に名声を轟かせていたバッハやモーツァルトとも同等の存在と見なしていたほどです。
後年には「ハイドンから何も学ばなかった」と言ったことがあるものの、これは彼のユーモアの一部であり実際にはハイドンから多くの影響を受けていました。
1809年にはベートーヴェンはハイドンの誕生日コンサートに出席し、ハイドンの手にキスをするという行動をとっていたほどです。この行為は彼の深い敬意を示すものといえるでしょう。
ハイドン側もベートーヴェンを偉大な野蛮人と呼ぶこともありましたが、こちらも彼のユーモアの一環で、決して侮辱的な意味ではありませんでした。
ベートーヴェンとハイドンはお互い言うところは言い、軽口が叩けるくらいに真摯で、互いに師弟感の敬意は持ち合っている、ある意味理想的な師弟関係だったといえるかもしれません。
ベートーヴェンとモーツァルトとの関係
ベートーヴェンと神童ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの関係は、音楽史において非常に興味深いものです。ベートーヴェンは若い頃にモーツァルトに強い影響を受け、彼の音楽を深く尊敬していました。
伝えられるところによればベートーヴェンはモーツァルトに会い、彼の前で演奏したことがあるとされていますが、その詳細は不明です。
モーツァルトの影響は特に彼のピアノ協奏曲や室内楽に見られます。ベートーヴェンはモーツァルトの作品から多くを学んでいることは確実です。
モーツァルトはベートーヴェンにとってスターのようなものだったといえるかもしれません。
ベートーヴェンとシューベルトとの関係
フランツ・シューベルトとベートーヴェンの関係もまた、音楽史において重要です。
シューベルトはベートーヴェンを非常に尊敬しており、彼の音楽に強い影響を受けました。
シューベルトはベートーヴェンの作品を聴くことで作曲技術を磨き、ベートーヴェンのスタイルを取り入れました。ベートーヴェンの音楽に対して「恐れ」を抱いていたとも言われているほどで、彼の偉大さに対する畏敬の念があったことが伺えます。
また、シューベルトはベートーヴェンの死後に彼の音楽を引き継ぐ形でロマン派音楽の発展に寄与しました。シューベルト作品にはベートーヴェンの影響が色濃く反映されていて特に彼の交響曲や歌曲においてその影響が顕著です。シューベルトはベートーヴェンの後を受け、より感情的で個人的な音楽を追求したといえるかもしれません。
作品だけではなく、シューベルトはベートーヴェンの死の際には彼の葬儀でトーチベアラー(トーチを持つ役割)を務めました。こうしたことからも彼の尊敬の念が伺えます。
また実際には、シューベルト自身はベートーヴェンが晩年に体調を崩していたため、彼の自宅を訪れた際には言葉を交わすことは出来なかったともいわれています。
シューベルトはベートーヴェンとの実際の関わりこそ薄いもののベートーヴェンの弟子ともいえるかもしれませんね。
シューベルトのお墓はベートーヴェンと並んでいます。墓地の諸事情で一度移動もさせられたこともあったのですが再び今は隣で眠っています。
